すごい

素直にすごい

やっぱりすごい

やっぱりあなただった



Sくん。





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こんなことがあっていいのだろうか

自分でも信じられない



今日はただの恋人のいちゃいちゃでしかなかった。

新しい曲の楽譜を渡すと「弾いて」と。
Sくんは椅子に座ってるから低い音の位置で弾いてと。
弾いていると、もう1つ高い音のところで、と。
すぐに手を止められて「やっぱり真ん中で弾いて」と。
僕がSくんの椅子に座って弾いていると
1段目が終わった途端
僕の目の前に来てピアノを弾きだした。
僕が後ろから抱きしめているような体勢になった。
初めは立っていた彼も僕の膝の上に座って弾いていた。
手のやり場に困った僕は自然と彼を抱きしめていた。 
彼の肩に顎を乗せて、彼が弾いている姿を見ていた。

それを1段ずつするものだから、
今日彼を抱きしめたのはもう何回だろうか。


彼が考えた早口言葉を言わされて
うまく言えなくて「ほら!」と。
ただのいちゃいちゃ。
「この早口言葉は家族の誰も言えなかった」と
じゃあ家族以外の人に言ったのは僕だけ?と
もうニヤニヤが止まらなくて。

僕はSくんをあだ名で呼んでいる。
実はそのあだ名は家族にしか呼ばれていないそうで。
こりゃまた家族以外の人で呼んでいるのは僕だけ?と。



そして「先生何か変わったと思う?」 と聞くと
一言目に「髪の毛切った!」と答えてくれる彼が大好き。 
職場もプライベートも家族も誰にも気付かれず
だけどSくんなら気付いてくれると確信していた。
そしたら本当に気付いてくれた。
「もう1つあるんだけど、分かるかな?」 
「え?うーん…」さすがに頭を悩ますSくん。
そう、髪の毛を染めたのだ。
しかしこれも全く気付いてもらえず。

「ヒント!首より上!」
「ヒゲ剃った!」
「髪の毛ワックスつけた!」
「髪の毛がいつもはふわっとなってるけど今日はぺちゃんこ」 
 違うんだけど、着眼点が確実に髪の毛なのが嬉しくて。
それに「え?髪の毛違うの…?」と言いながら
髪の毛をくしゃくしゃされたり前髪あげられたり…
本当はこんなことされるの嫌だ。
だけどSくんにされるのは別格で
嬉しくてたまらなかった。

「髪の毛は惜しいねんけどなぁ…」
「わかった!髪の毛染めた!」
さすが。さすがだった。やっぱり彼。
伝えた、気付いてくれたのは彼だけだったこと。
そして当ててくれて大好きだと。

彼は僕の変化にいつも気付いてくれるのに
僕はどうしてちゃんと言えないのだろう。
これは本当にいつも後悔している。
だから今日はちゃんと伝えた。
今更だけど「この間髪切ったよね」と。
そこからSくんの床屋さん事情の話になり
Sくんの以前通っていた床屋さん
そして新しく行った床屋さんを教えてくれた。

彼はお母さんに坊主にさせられそうになったそう。
それを聞いた僕は全力で「あかん!」と。
彼に言っても仕方のないことだと分かっていても
全力で反対した。 
彼自身も坊主は嫌だったみたい。

「先生はこのSくんが好き」と
お気に入りフォルダに入っているSくんの中から
お気に入りの髪型のSくんを見せた。
お気に入りフォルダの中身を見られてしまって(軽く)
めっちゃ焦ったけど
「僕以外の人の写真!そうやろ?」って言ってたけど
全部あなただから。あなたと僕の写真だから。

今度、他の人の写真が見えなくなるくらい
先生と写真撮ろうって言ってみよう。



最後、何気に椅子のもたれる部分に
僕が手を置いていたら
彼の小指と僕の小指があたって
小指で指同士を繋いだ。





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長くなったけど
今日のことは絶対に書き留めときたかった。
書き留めなければいけないこと。

なんか…ほんとただの恋人だった。
これ以上でも以下でもない恋人だった。

夕方の話だが、そこからずっと…今も。
ふわふわしているの。

もう、ね…
たまらなく幸せ。

やっぱり、彼だ。
すごい、この落ち着く感じと安定感。
彼と一緒に過ごしてきた時間は
他の誰もが変えられない。



今「セックスして」と言われると
100%勃たない。
もしかしたら「今」だけじゃなく「これから」も…





ごめんなさい
真っ直ぐに生きるあなたを
真っ直ぐに向き合ってくれるあなたを
裏切るようなことをしてしまって